人材不足の時代に「選ばれる施設」とは

人材不足の時代に「選ばれる施設」とは

2026年07月25日(土)11:24 AM

「求人を出しても、応募が来ない」——福祉の現場で、こうした声が年々強まっています。人材不足が深刻化するなか、施設が「選ばれる」ためには何が必要なのでしょうか。本記事では、最近の統計をもとに、職員の声を聴き、運営に活かす姿勢が、これからの人材確保に果たす役割を考えます。

福祉の人材不足は「構造的な課題」になっている

まず、現状を数字で確認します。全職業の有効求人倍率が1.2倍前後で推移するなか、介護関係職種は突出して高い水準が続いています。厚生労働省の一般職業紹介状況をもとにした各種分析によれば、介護サービス職の有効求人倍率は3倍を超える水準で推移しており、全体平均の2〜3倍近い「売り手市場」が常態化しています。

さらに厚生労働省の推計では、介護職員は2025年度に約32万人、2040年度には約69万人が不足すると見込まれています。これは景気変動による一時的なものではなく、少子高齢化に根ざした構造的な課題です。

つまり、施設は「応募者を選ぶ」立場から、「応募者から選ばれる」立場へと変わりつつあります。求人を出せば人が集まった時代は、すでに過去のものになりつつあるのです。

人が辞める理由の上位に「運営のあり方への不満」

では、なぜ人が定着しないのでしょうか。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」は、離職理由について示唆に富む結果を示しています。

同調査で、前の職場を辞めた理由として繰り返し上位に挙がるのが、「職場の人間関係に問題があった」「法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」です。収入面の不満よりも、こうした「職場のあり方」に関する理由が上位を占める点は注目に値します。

前の職場を辞めた主な理由(上位)
職場の人間関係に問題があった
法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった
他に良い仕事・職場があった
収入が少なかった

出典:公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」をもとに作成

「運営のあり方への不満」とは、言い換えれば「自分たちの声が、運営に届いていない」という感覚ではないでしょうか。日々感じている課題や改善の提案が、聞き入れられないまま積み重なっていく。その積み重ねが、離職という形で表れているとも考えられます。

求職者は「働きやすさ」を見ている。でも、外からは見えにくい

一方、仕事を探す側は何を重視しているのでしょうか。求職者向けの各種情報を見ると、給与や勤務地と並んで、あるいはそれ以上に、「職場の雰囲気」「人間関係」「働きやすさ」が重視されていることが分かります。

ところが、これらは求人票の条件面からは読み取りにくいものです。だからこそ求職者は、施設見学での職員の表情、スタッフ同士の会話、職場の整理整頓の様子といった、「目に見えるサイン」から職場の空気を推し量ろうとします。

ここに、一つの「選ばれる理由」が生まれます

「職員の声を聴き、運営に活かしている施設」であることは、求職者にとって働きやすさの何よりの証になります。定着率の高さや職場の落ち着いた雰囲気は、そうした地道な取り組みの積み重ねから生まれるからです。

「声を聴く仕組み」が、定着と採用の両方を支える

職員の声を聴くことは、単に離職を防ぐだけではありません。次のような好循環を生み出します。

1

課題が見える化される:現場が感じている問題が、具体的な形で共有される

2

職員が「聴いてもらえた」と感じる:それ自体が、職場への信頼につながる

3

働きやすい職場が育つ:定着率が上がり、現場に余裕が生まれる

4

「選ばれる施設」になる:働きやすさが評判となり、採用にも好影響が及ぶ

職員の声を聴くことは、定着(辞めない)と採用(集まる)の両方を同時に支える取り組みだといえます。人材不足が構造的な課題である以上、この好循環をいかに早く回し始めるかが、施設の将来を左右します。

「聴き方」にも工夫が必要です

ただし、職員の本音を引き出すのは簡単ではありません。上司が直接尋ねても、「波風を立てたくない」という思いから、当たり障りのない答えしか返ってこないことも少なくありません。声を聴く姿勢はあっても、その声が本音でなければ、課題は見えてこないのです。

そこで有効なのが、外部機関による匿名アンケートです。回収も集計も第三者が行うことで、職員は安心して率直な意見を伝えられます。内部では表に出にくかった課題が見えるようになり、その分析結果は、職場改善の確かな出発点になります。

こうした取り組みは、処遇改善加算の「職場環境等要件」——職員の意見を聴き、現場の課題を見える化する取り組み——への対応としても活用できます。人材確保と制度対応を、一つの取り組みで両立できるのです。
※ 要件充足の可否は、所管の指定権者にご確認ください。

まとめ

人材不足が構造的な課題となるなか、施設は「選ばれる」立場へと変わりました。離職理由の上位に「運営のあり方への不満」があること、そして求職者が「働きやすさ」を重視していることを踏まえれば、職員の声を聴き、運営に活かす姿勢こそが、これからの人材確保の鍵になります。

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